子供の側弯症は改善する?悪化させないためにできること
側弯症とは?
まずは背骨について少し説明します。背骨は専門的には「脊柱(けきちゅう)」や「脊椎(せきつい)」と呼ばれ、背骨は首からお尻までつながっていて部分ごとに名前が付いています。構造を見ると頸椎(首)、胸椎(胸)、腰椎(腰)、そして仙骨、尾椎で形成されています。
側弯症とは背骨が左右に曲がっている状態が側弯症です。側弯症は背骨が左右に曲がっているだけではなくねじれをともなうことも多いです。
側弯症であるかどうかは背骨の湾曲の大きさで判断され背骨の上下で最も傾いているものの角度で計測し、その角度が10度以上であれば側弯症です。40~50度に悪化すると手術が必要と判断されることもあります。
側弯症は軽度であればほとんど自覚症状がない場合も多いですが進行すると背中や腰に痛みや違和感が出たり、さらに悪化すると神経にも影響が出たり、肺や心臓などの内臓にも影響を及ぼすことがあります。
側弯症の分類
①機能性側弯
何かの原因により一時的に生じた側弯。背骨自体に原因はなく、生活習慣や椎間板ヘルニアなどの痛みで一時的に生じた側弯。
②構築性側弯
a.特発性側弯
原因がわからない側弯症で、側弯症の80%はこの特発性側弯に分類され特発性側弯は発症した年齢により分類されます。
1.乳幼児期側弯症(0~3歳)
3歳以下で発症した側弯です。自然治癒することも多いですが、ねじれが強く伴っていると悪化することもあるので注意が必要です。
2.学童期側弯症(4~9歳)
4~9歳で発症し、進行することが多くみられます。
3.思春期側弯症(10歳以降)
10歳以降に発症し、女子が多い傾向にあります。特発性側弯の多くが思春期側弯症にあたり、身長が急激に伸びるころに進行し悪化する場合があります。
b.原因がわかっている側弯症
脊柱の先天的な異常や神経の以上、治療の過程で生じるなど原因がわかっている側弯症。
大人は骨が成長しているので急激に悪化するケースは少ないのですが、子供、特に成長期にある年齢の場合、一気に進行し悪化してしまい病院へ行った時には装具や手術が必要となるケースもありますので早めの対応が必要となります。
今回は子供の側弯症について家庭でのチェック方法、病院選び、子供の側弯症は改善するのか?について述べていきます。
側弯症のチェック方法
①子供がまっすぐ立った状態でウエストのくびれ、肩の高さ、肩甲骨の位置や出かたを確認。
②子供が両足をそろえ、手のひらを合わせて膝を伸ばしたままおじぎをし、上半身を前に倒す。その状態で子供の後ろから背中、肩、腰に左右差がないか確認。
このチェックで子供の体に左右差があると側弯症である可能性が高いです。気になる場合は早めに整形外科などの専門家に相談することをお勧めします。
病院での治療法
子供が側弯症であるかもと思ったら、まずは整形外科に行きましょう。整形外科でレントゲンを撮り、子どもの背骨の湾曲の角度により10度以上あると側弯症と判断されます。
子供が側弯症と判断された場合、病院ではどのような治療がされるのでしょうか?
①経過観察
側弯の湾曲が軽度(25度未満)の場合は定期的な経過観察だけでよいケースもあります。定期的(3か月~1年に一度)整形外科でレントゲンを撮って背骨の湾曲を計測し確認します。
②装具治療
一般的に側弯の湾曲が中等度(20~40度以上)の場合は、脇の下からお尻まで覆う大きなコルセットを装着しする装具治療を行います。子供の場合、成長期に一気に進行することがあり、子供の側弯を少しでも悪化させないようにするためにも装具が重要な役割を果たしてくれます。効果は確かですが、完全に側弯を矯正することは難しいとされています。子供の骨格が成熟した時点で湾曲が中等度以内であり進行もなければ装具装着時間を減らし、装具治療が終了となります。
③手術治療
重度の側弯は腰や背中に痛みを感じる以外にも、神経が圧迫されることによって足にしびれが出たり、内臓が圧迫され消化器官や呼吸器官にも異常が出ることがあります。子供の側弯による身体的、精神的苦痛を予防するためにも重度の側弯を矯正し進行を防止する唯一の方法である手術が必要となってきます。
子供の側弯症の病院選び
子供の側弯症が気になったら、まずは病院を受診しましょう。側弯症は整形外科で診てもらいます。ただ病院選びで注意してもらいたいことは、全ての整形外科が側弯症についての専門的な治療がおこなえるわけではありません。
整形外科医でも背骨、腕、足など体の部位で専門が違います。側弯症の治療や手術となると側弯症の専門医が在籍している病院での治療が必要となります。
まずは近くの整形外科を受診し、子供が側弯症であると診断された場合は子供の側弯症を治療している専門医のいる病院を紹介してもらうといいでしょう。
日本側弯症学会で紹介されているホームページの医療機関一覧からお近くの病院を探すこともできます。ただし、こちらのホームページに掲載されている病院や医師は側弯症学会の会員が在籍する病院が紹介されているだけですので受診する際はご自身で担当医師やどのような治療をするのかなど確認する必要があります。
子供の側弯症は改善するのか?
子供が病院で側弯症と判断された場合、何かできることはないか?改善方法はあるのか?と考える方は多いと思います。側弯症が何かの原因で一時的に生じたものである場合は改善する見込みはあります。しかし、多くの割合を占める特発性側弯症の場合、背骨は完全にはまっすぐになることはないです。
完全にはまっすぐになることはない特発性側弯症ですが子供の側弯症を悪化させないようにできることはあります。
現在、日本の医療では側弯症は①経過観察、②装具治療、③手術といった対応になります。
ですので、軽度の段階で側弯症と診断されたとしても経過観察だけです。その後、初回よりも2回目の方が数値が悪化し、さらにまだ軽度だからそのまま経過観察のみと言われ数か月後に行ったときには”かなり悪化しているので手術です”となった場合、親としては何かやれることはなかったのだろうか?と思うのではないでしょうか?私ならきっとそう思います。残念ながら日本の病院ではそのような対応であるのが現実です。
子供の側弯症が悪化しないためにできること
では、子供が側弯症であると診断された場合どうしたらよいのでしょうか?もちろん、前提として病院での経過観察と医師の判断は必要です。その上で悪化させないためにできることを考えていきます。
今回は原因のわかっていない特発性側弯の悪化予防策になります。
1.シュロス法
側弯症に対するアプローチにシュロス法というものがあります。シュロス法とは、側弯症に特化した運動療法を用いた手術をしない側弯症の治療法です。ドイツで始められたシュロス法は側弯症の患者さんの背骨のカーブに応じてねじれやカーブを小さくすることを目的とした運動療法です。日本では認知度は低いですが、ドイツを中心に世界的に効果があると評価されている方法です。
日本でも接骨院や整骨院などで取り入れているところもあります。シュロス法には子供でもできる運動もあります。側弯症の患者さんに合わせた運動を継続することで側弯症を悪化させにくい体づくりを目指す方法です。
2.保存療法
先ほど日本の病院では経過観察、装具、手術しか治療法はないと述べましたが少数ではありますが整形外科医で保存療法を行っている医師がいます。手技による治療法で早期からの治療が望ましいと文献でも述べられています。こういった手技療法を知る整形外科医に子供を診てもらうのもいいでしょう。ただし、ほとんどの整形外科医は保存治療をしていないのが現実です。
3.整体やカイロプラクティック
医学的には効果なしと言われていますが側弯症の方は背骨の湾曲に引っ張られ、腕、股関節、足首などの関節や筋肉が緊張し可動域が狭くなっています。その状態が続くと、背骨は伸びることなく湾曲が悪化する可能性が高いです。整体やカイロで関節や筋肉をゆるめることは背骨の湾曲がこれ以上進行し悪化ないよう、もしくは進行速度を遅くするためには有効だと考えます。
しかし、治療院選びは大切です。どこの整体やカイロでもいいわけではありません。脊椎側弯症に対応しているのか?改善実績はあるのか?子供でも施術可能か?などしっかり確認する必要があります。
4.ストレッチ
側弯症の方は背骨の湾曲具合によりストレッチも動きやすい方向、動きやすい体の使い方などがありそれによって悪化してしまう可能性があるためオリジナルでやることはお勧めはしません。
筋肉や関節の柔軟性を保つ上ではやったほうがいいのですが特に子供はどこの筋肉を意識してと深く考えずにやってしまうことも多いので側弯症の専門知識のある方の指導の下で実践したほうがいいでしょう。そうしないとさらに悪化する可能性があるので気を付けましょう。
さいごに
もし、自分の子供が側弯症と診断されたら慌ててしまう親がほとんどではないでしょうか?子供が側弯症と診断されても、悪化させないような手段がいくつかありますし病院でも装具や手術といった治療法もあります。
冷静になって、子供にしてあげられることをご自身でも調べ医師の診断を仰ぎながらも子供の側弯症と向き合っていくことが大切です。